なんのために勉強するの?(連載 3/4)


(3)子どもの幸せのために親にできること


心理相談員 みやたあきら


手を差し伸べるとき

幸せとは「安心と喜び」でした。親は子どもに安心を与えることはできますが、喜びは子ども自身が見つけるしかありません。子どもが思春期になり、自分の意志で歩き始めたら、親は「信じて見守る」になります。

ただ、見守ってばかりもいられない場合もあります。

・子どもが助けを求めてきたとき

・子どもの安全に関わるとき

・犯罪に巻き込まれるのを防ぐとき

・「いじめ」や「ハラスメント」など、子どもの力では対処できないとき


子どもが、自分の興味のある方に歩いている時(反抗/自立行動)は「見守る」でした。それは子どもが小さい時も思春期も同じです。子どもの前に障害物や水たまりがあっても、親はぐっとこらえて見守ります。ころんだり失敗したりしながら、子どもは成長していきます。

でも、子どもの前が断崖絶壁になっていたら、駆けつけて抱き止めてください。


勉強ではなく夢を応援する

夢を叶えるために、学校での勉強が必要ない場合もあります。

私の知っている子は、中高一貫の進学校に通っていましたが、「和菓子職人になりたい。高校へは行かない」と言い始めました。親は、「高校は卒業した方がいい。和菓子の勉強はそれからでも遅くはない」と反対しました。

私からは、「別の夢があったけれど、勉強がきらいで和菓子職人を選んだのなら、自分の幸せをあきらめたことになる。でも、本当に和菓子職人になりたいなら、子どもの決断を応援してあげればいいと思います」と伝えました。

結局その子は、高校には進学せず、和菓子の専門学校に入りました。私は今でも、その子の夢を応援しています。


親子の信頼関係が大事

中学生、高校生になっても、「まだ夢がない」と焦りを感じている子は多くいます。夢はあるけれど、本当にその夢でいいのかどうか不安を感じている子もいます。コンプレックスや人間関係に苦しみ、夢のことまで考えられない子もいます。

思春期の接し方の基本は「信じて見守る」ですが、そんな子どもを見守るだけでいいの?と、不安になることもあるでしょう。そんなとき、子どもとの間に信頼関係ができていれば、子どもへのアドバイスや情報提供が有効になります。

ここでいう「信頼関係」とは、親子が相手を認め合っている対等な関係のことです。


 

「気持ちを認める聴き方」で信頼関係を築く

信頼関係を築くには、いくつかポイントがあります。

  1. 指示や説教はいっさいしない。
    「〇〇しなさい」、「だめじゃない」などの指示や説教をするのは、相手より自分の方が偉い、自分が正しいという前提です。思春期の子にとっては、「うざい!」になります。
  2. 子どもが話してきたら、「気持ちを認める聴き方」で聞きます。「気持ちを認める聴き方」とは:
    ● 相手がどういう気持ちかに意識を集中する。解決策やアドバイスは考えない。
    ● 相手の考えや思いに賛成できなくても、そう思っていることは認める。

子どもは話を聞いてもらうと、「自分のことを分かろうとしてくれている」と感じます。気持ちを認められると、「こんな気持になってもいいんだ」と、自分に自信が持てます。ネガティブな気持ちも否定されたり説教されたりしないと分かると、悩みや辛い思いも話してくれるようになります。対等で良好な関係です。


子どもの意思を尊重したアドバイスを

人は、気持ちを受け入れてくれた人の話なら、聞こうと思います。子どもの気持ちを受け入れることで、はじめて、その子へのアドバイスが有効になります。

ですから、「気持ちを認める聴き方」で信頼関係ができたら、役立つ情報を提供したり、選択肢を示してあげてください。

たとえば志望校で迷っている時に、それぞれの学校の情報を提供する。不登校になり、学校へ行けない自分に自信をなくしている時に、「フリースクールや、通信高校もあるよ。高卒認定を受ければ、大学だって受験できるよ」など。

「私はこう思うよ」と、親の意見を言ってもいいでしょう。親の意見はアドバイスであって、決めるのは子どもです。「説教」や「説得」ではなく、子どもの意思を尊重したアドバイスなら、子どもは聞く耳を持ちます。

つづく


心理相談員 みやたあきら プロフィール

広島市在住。 大阪大学 基礎工学部 卒。1977年、地元広島の大手自動車会社に入社。会社員時代に、「モノづくりもビジネスもすべて、人の幸せのため」と気づいて、心理学やカウンセリングを学ぶ。現在は心理相談員として、SNSでの発信や執筆、講演活動、生き辛さを抱える子どもたちや保護者の相談に乗っている。講演は、学校、公民館を始めとし、広島市シニア大学、江戸川区「区民の集い」、浄土宗保護司会(港区 増上寺)など多数。これまでに1万5千人に講演を行い、手紙やメール相談のやりとりは2万7千通を超える。

◆著書『この子はこの子でいい、私はわたしでいい』は、子育ての基本的な考え方と、乳幼児期から自立までの具体的な対応方法を分かりやすく解説。手元に置いて、子育てに迷ったら手にとってもらいたい一冊。Amazonと楽天ブックスで販売中。

https://amazon.co.jp/dp/B0CMRCVX6S

https://books.rakuten.co.jp/rb/17711699/


◆ブログ『幸せのDNA … 学校では教えてくれない大切なこと』には、肩の力を抜いて笑顔で子育てができる記事が満載。

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