なんのために勉強するの?(連載 4/4)


(4)子どもの夢を応援する


心理相談員 みやたあきら


夢は変わってもいい

進級するときに何コースにするか、志望校をどこにするか、就職先をどこにするか……などの進路は、「夢」から逆算して決めることになります。ですから、夢が決まっていないと、子どもは焦ります、迷います。そんなとき親は、どんな声掛けをすればいいのでしょうか。

「夢」とは「将来したいこと」でした。人は成長するので、「楽しい」「うれしい」と思うことは変わります。ということは、夢も変わります。それに、ある時点の「夢」は、その時、その人が知っていることの中でしか選べません。いろいろな経験をして世界が広がれば、「もっとやりたいこと」が見つかるかもしれません。

世界で成功して幸せそうに生きている人の経歴を見ても、「自分がやりたいのはこれだ!」と気づいて、夢や職業を変えた人は多くいます。

ですから私は、子どもたちには、「夢は変わってもいい。今、『これがいい!』と思う方向に、一歩を踏み出してごらん」と話しています。


夢は「なりたい」ではなく「何をしたいか」と考える

「夢はあるけれど、ほんとうにこの夢でいいかどうか不安」という子も多くいます。私はそういう子には、「何になりたいかではなく、何をしたいかと考えてごらん」と話します。

夢というと、「○○になりたい」という夢を持つことが多いですよね。たとえば「弁護士になりたい」と。ところが、「弁護士になりたい」が夢だとしたら、司法試験に合格して弁護士バッジを胸に付けたとたんに、夢が終わってしまいます。それって、なんか変ですよね。ほんとうは弁護士になって、「したいこと」があったはずです。

「〇〇になって、何をしたいのだろうか」と考えることで、ほんとうにしたかったことに気付くこともあります。「〇〇にならなくても、△△になってもいいじゃないか」と、夢の可能性が広がることもあります。

親子で、そんな話をしてみてください。


イメージの力でモチベーションを高める

「何をしたいか」が分かったら、それができている自分を、映画を見るようにイメージしてみることをお勧めします。きっと、ワクワクすることでしょう。

もし、イメージが湧かないなら、その夢についてもっとリサーチするよう勧めてみてください。もしイメージしてもワクワクしないなら、ほんとうにしたいことではない可能性があります。自分は何をしたいのか、もう一度考えてみるといいでしょう。

夢が実現している状態をイメージすることには、「モチベーションがぐっと高まる」という効果もあります。子どもは夢に向かって、苦しい頑張りではなく、意欲的に頑張ることができます。


夢は「今好きなこと」の延長線上にある

夢は、「見つけなさい!」と言われて見つかるものでありません。「まだ決めていないの」と焦らされると、夢のない自分がまるでダメな人間のように思ってしまいます。

そういうときは、今、自分が「好きなこと」「したいこと」「興味のあること」を出発点に、「なぜ好きなんだろう」と考えるよう、勧めてみてください。

夢は「将来したいこと」でした。ということは、「今好きなこと」の延長線上にあるはずです。すぐに夢は見つからなくても、これから進む方向性は見えてくるかもしれません。たとえば、「私は本を読むのが好き。みんなとワイワイ遊ぶより、一人で静かに過ごすのが好きだから」だったとしたら、多くの人と接する仕事ではなく、一人でじっくり取り組む仕事が向いていることが分かります。

そのように、「今好きなこと」を大事にしながら、焦らずに夢を探していけばいいと思います。


夢は大きくても小さくてもいい

「大きな夢を持て!」という人もいますが、私は、夢の大きさが夢の価値ではないと思います。「オリンピックで金メダルをとる」という夢も、「ふるさとで幸せな家庭を持つ」という夢も、心からそれを望み、その夢に向かって努力するなら、りっぱな夢であることに変わりはありません。

大きな喜びがまばゆく輝く人生だけでなく、日々の生活の中にキラキラと輝く喜びが散りばめられている人生も、幸せな人生ではないでしょうか。


子どもの幸せな人生を応援しつづける

子育てのゴールは、「子どもが自分で道を選び、喜びを感じながら自分の力で歩むようになること」です。そのためには、「子どもが歩き始めたら見守る、かけ戻ってきたら抱き止める」でした。ですから子育ては、子どもの手を引っ張っていくイメージではなく、後ろから見守りながら子どもの歩みを応援するイメージです。

これからも、ハラハラ、ワクワクしながら、お子さんの幸せな人生を応援してあげてください。

(完)


心理相談員 みやたあきら プロフィール

広島市在住。 大阪大学 基礎工学部 卒。1977年、地元広島の大手自動車会社に入社。会社員時代に、「モノづくりもビジネスもすべて、人の幸せのため」と気づいて、心理学やカウンセリングを学ぶ。現在は心理相談員として、SNSでの発信や執筆、講演活動、生き辛さを抱える子どもたちや保護者の相談に乗っている。講演は、学校、公民館を始めとし、広島市シニア大学、江戸川区「区民の集い」、浄土宗保護司会(港区 増上寺)など多数。これまでに1万5千人に講演を行い、手紙やメール相談のやりとりは2万7千通を超える。

◆著書『この子はこの子でいい、私はわたしでいい』は、子育ての基本的な考え方と、乳幼児期から自立までの具体的な対応方法を分かりやすく解説。手元に置いて、子育てに迷ったら手にとってもらいたい一冊。Amazonと楽天ブックスで販売中。

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https://books.rakuten.co.jp/rb/17711699/


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