子どもを「自律・自立した人に育てる」ために、親も「自分自身の自律・自立」を考えよう。

「子どもに幸せになってほしい」と願い、子育てしています。子育ての現場である「親子関係、家庭環境」のつくり方、難しいですね。変化が早く激しい現代、子どもたちには「生きる力」を身につけてほしいと思います。乳幼児期から青年期に至るまで、家庭では何を意識しながら子育てをしていったらいいのでしょうか。

キャリアコンサルタントの活動のなかで出会った10代後半から20代前半の若者たち。「生育過程はどうだったのだろう。家庭はどうなっているのだろう」と疑問を感じたことがありました。とくに「気になる例」を紹介します。

自分で考えて行動できる若者がいる一方、自力で行動する力が弱く、他人任せの若者も目立ちます。この差は大きいように思います。いっしょに考えてみましょう。


【教室内で発言など嫌だ】

大学の教室では、授業終了後に学生が質問に並びます。授業中に「手を挙げて質問」はしません。注目を浴びたくないからです。教室では存在を消しておきたいのです。

個別に話を聴くと、育ちのなかで「発表したら笑われた」「いじめられた」などの経験がトラウマとなり、「人前で発言はしない」となっていることが分かります。家庭内のサポートが得られ、トラウマ解消がなされているとよかったのですが、持ち越しています。

どんな経験も成長の糧となっているものです。自分の弱い部分も受け止めて、「この自分でいいんだ」と自己肯定してほしいと思います。子どもが「自分自身を肯定できるような言葉かけ」は、家庭内で頻繁に行ってほしいことです。


【つぶやいて、他者を動かそうとする】

「友だちはいないので、席がどうなのか、気になって仕方がありません」「えっと、友だちが言ってるんですけど、教室はWifiがつながらなくて困っています」

これらは、学内WebシステムのQ&Aに届いたものです。つぶやきが書かれているだけで、Q=質問は書かれていません。

こうつぶやくと、家庭内では誰かが、「一人で座ればいいよ」や「グループワークはやらなくていいよ」とアドバイスをくれたり、「つながるように調べてあげるよ」など「~してあげるよ」と代わりに対処してくれたりするのでしょう。「つぶやけば、相手が自分のために何かしてくれる」となっているのではないでしょうか。「自分で考えて行動する力」は育ちません。「どうすればいいと思う?」と、本人に考えさせる問いかけが必要です。


【大学の授業の課題、親がやる】

webを使うものであれば、代理入力も可能です。その日の授業内容を子どもに聞いているのか、テキストを読んでいるのか分かりませんが、それっぽく書いています。しかし内容は明らかに変です。親がやったことがバレます。帰って来た子どものランドセルを玄関先で開けて、「今日の宿題は何?」と確認しているような様子が想像されます。

本人がやらないと本人の力にはなりません。どんどん「できない人」にされてしまうと、心配になります。


【親による他者分析が自己分析】

「あなたは営業には向いてないから、事務にしなさい」と親が言っています。その通りに就職活動をしている学生は、自分の考えで行動していないので、決まりません。

「自分自身の考えだ」と思い込んでいるだけです。親が言うセリフをそのままそっくり語ります。「私は営業に向いていないので、事務がいいです」と。

「自分は本当に営業に向いていないのか、なぜ向いていないのか、心から事務をやりたいと思っているのか、どんな事務をやりたいのか」には答えられません。考えていないからです。

自分について深く考えることを経験してきていないのです。自分で考える暇なく、親から「あなたは、~だ」と言われ続けているので、「私は、~だ」と思っています。何もかも親が決めていたら、自分で考える必要はありません。

「あなたはどう思う?」と、本人に考えさせることが大切です。


【親が率先して受験】

「就職活動のSPI、代わりに受けたんだけど、面接で落ちたよ」「うちもだよ」と就職活動生の親たちの会話です。「いい大学を卒業して、大企業に就職する人生」を歩んできた世代は、令和の時代になっても、筆記試験の成績さえ良ければ、就職試験も合格だと勘違いしています。

子どもに求められるのは、「自分でやるよ。大丈夫だよ」と言う力です。


【有名企業内定は誰のためか】

「そんな会社、聞いたことないから断りなさい」と内定辞退を強いられた学生は、親の言うことをよく聞くいい子です。素直に従います。

就職活動を継続することになりますが、ひじょうに苦労します。大手企業であるほど、早目に採用活動を終えているのです。卒業式を迎えても内定を持っていないことになりかねません。

親御さんの話を聴いていると、「大企業」を目指しているのは、親御さんご自身であるように感じます。「有名企業に入社すれば、幸せな人生を送れる」と考えているのでしょう。「TVでコマーシャルをしているような有名企業でなければ」となっています。「会社名に馴染みのない優良企業」はたくさんあるのですが、親御さんはそのことに気づいていません。

「自分の人生だから自分で決めるよ。必要なときは相談するからね」と言い切れる子どもに育てておきたいものです。


【子どもに遠慮】

「子どもは何も言わない。就活がどうなっているのか気になるけど、聞けない」という親御さん、珍しくはありません。

キャリアサポートセンターの掲示を熱心に見ているのは、就職相談にいらした親御さんです。子どもと話をするのではなく、自ら大学にやって来ます。「何も言わないから、気になって~」と語り始めます。

「気になるのですが、聞くと不機嫌になるので、聞けないです」と電話口で言う親御さんも少なくないです。心配を募らせている様子が伝わってきます。

「何をしたいのか、どこを受けているのか、いつ面接なのか、~はやったのか等々」細かな詮索をされ、そこに「親のうるさい指示」が出てくること想像すると、子どもは話しません。

子どもが話したいときに話せるよう、親は受け入れ態勢だけをつくり、「いつでも話を聞くよ。相談にのるよ」のスタンスを示し、子どもの行動を応援しましょう。サポーターの存在が身近にあることを感じられると、力になるものです。


【大学生になってからでは遅い。愛情表現って難しい】

「働く社会、仕事をする場」は、学校のように100点満点の試験で成績がつくものではありません。「決まった正解」はなく、その職場、その会社、その場面においての正解を創っていくようになります。「自分の頭で考え、自分で決断し、行動する力のある人、他者と協力し合える人」が求められています。

こうした力は、就職する前に身に着けておきたいものです。大学生になったときには、すでに差が開いているように感じます。

乳幼児期からの生育過程で、すこしずつ力が蓄えられていきます。一番身近な存在である親が、「どんな言葉かけ、働きかけ」をするかが重要です。

「子どもの将来のために、幸せな人生のために」が根底にあります。愛情を表現する方法は難しいものです。

親は、「~しなさい。~じゃダメ」「言ったとおりにすればいいのよ」と指示を出したり、「言われたとおりにしないから~なるんでしょ!」と怒り感情をぶつけたりします。子どもを心配しているからです。しかし、このかかわり方が、「自分では何も考えない・何もしない」につながる危険もあります。

子どもが自分のことを話しはじめたとき、十分に話を聞いた後の「自分のやりたいようにやっていいんだよ」であれば、「自分を信頼してくれている」と受け取りますが、ろくに話も聞かずに面倒くさそうに「好きにしていいよ」となったら、「自分を気にしてくれていない。自分の存在など、大したことない」と受け取る可能性があります。

「親が子どもにどう接し、どんな言葉をかけていくのか」これも正解はありませんが、「子どもの自立」を意識した言動行動が必要なのでしょう。私たち親、大人が考えるきっかけとして、いくつか事例を紹介してきました。

子どもを自立した人に育てるために、親も自分自身の自律・自立を考えること、自分の人生を生きること、一緒にやっていきましょう。


このコラムを書いたのは

奥 富美子(おく ふみこ)

会社員を経て、国家資格キャリアコンサルタントとして活動しています。就職活動中の方の相談対応・書類添削、研修講師の育成、コミュニケーションのワークショップなどに携わっています。また、大学で「キャリアデザイン」「職業人生と健康」の授業を担当し、若年層のキャリア支援をしています。

これまでと今→奥富美子プロフィール


「キャリア」と「子育て」の関係性

進路は、本人の意思で決定。親は特に何もしていません。娘(現在30代、一人っ子)が何となく話し出す話を、ただ聴くだけです。

私たち夫婦は共働きのため、娘は生後三か月から保育園通いです。娘の祖母にあたる私の母に助けてもらい、パパ友ママ友やクラスメートのおじいちゃまおばあちゃま、ご近所の方にまで力をお借りして仕事継続に奮闘しました。

小学生の頃は学童保育に預け、そのあとの時間は定年退職した母の家です。

家族がお互いに協力し合いながら、各自が各々に自分自身を育ててきたように思います。

「多様な人々に、より多く出会わせること」を意識的に行ってきました。親は「機会提供」しかできないと考えています。年齢、国籍、住んでいる地域が異なる子どもたち、私たち夫婦それぞれの知人友人たち、親戚の人々など、バックグラウンドの異なる人たちと接する機会を設けました。人とのかかわりは、育ちの栄養になります。「ダイヤモンドはダイヤモンドで磨くように、人は人で磨く」を、いまも実践しています。


新米ママ・パパへのメッセージ

ママ自身、パパ自身が、「自分の人生」を楽しく、自分らしく生きていれば、それで十分です。

「人生には大変な思いがけない不運に見舞われることもある。でも、ママもパパも頑張っているよ」「仕事は大変だけど、楽しいよ」「ママ・パパたち大人だって、自己成長を感じられるのはうれしいものだ」を日常生活で感じながら過ごしてほしいです。

感じたことを「言葉にして」表現し、子どもに教えてあげてください。「ママはね、会社で~なことがあって、うれしかったよ」「パパはさ、~の勉強しているんだよ。●月に試験があるんだ。一緒に勉強を頑張ろうね」など。

そして、子どもの小さな態度行動に「言葉をかけて」ください。「●●ちゃん、~になったね、よくがんばったね」「●●ちゃん、今日も~して、すごいね」「●●ちゃん、~してくれてうれしいよ。ありがとう」「●●ちゃん、ママもパパもいつも見ているよ。~が~になったね。うれしいね」

子どもたちは、ママ・パパの様子を見て感じ取っています。ママ・パパの言葉、表情、態度、行動から、「うれしい、よかった、楽しい、がんばろう」などのポジティブ感情になるものを受け取れば、それをエネルギーにかえ、自律の力を養っていきます。

「親が何でも代わりにやってしまう。親の思い通りに動かす」環境では、子どもは自分に自信を持てません。自分でやらないかぎり、自分の経験にならず、自信もつかないのです。

子どもが自分で何かをして失敗したとしても、責めるのではなく、「よくやった」と努力を労うことが大切です。こうした言葉やかかわりをもらって、「失敗したっていいんだ」と学び、自己肯定感が育ちます。そして、次にどうするか考える力がつきます。

「子どもが、自己肯定感を持つ」ように育てましょう。そのためには、ママ・パパも自分自身を肯定することです。どんな自分も「I am OK.」です。


ブログ・書籍など

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